カルチャー  カルチャー 2017年4月23日 更新 お気に入り追加 0

杜氏がいない酒蔵の秘密

☆SAKEPRO編集部☆ ☆SAKEPRO編集部☆

日本酒の醸造業界では、杜氏(とうじ)の後継者が不足し、杜氏がいない酒蔵も見かけるようになっています。 杜氏がいなくても酒造りが問題なくできるものなのか、気になるところです。 そこのところを探ってみることにしましょう。

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そもそも杜氏とは何か?

日本酒の醸造では、酒蔵での現場責任者として、蔵元の社員でもない杜氏に、1年契約で製造管理を全面的に請け負わせる習慣になっています。
杜氏は、現場労働者(蔵人)の人事権すら保有していて、蔵元は、杜氏に対して酒造りの全責任を委任します。
しかし、杜氏の不足などもあって、このような形態は変化しつつあり、杜氏がいない酒蔵も増えつつあります。

このようなことが可能になったのも、日本酒の製造過程の管理を、杜氏個人の長年の経験による暗黙知に委ねることをやめ、全てを科学的なデータ管理による製法に変えたからです。
杜氏の長年の経験による勘は、原料配分管理や温度管理や時間管理など、あらゆる製造管理を数値化したものに転換されたのです。
製造に最適の条件は、勘に頼るのではなく、数値管理された製造ラインにより、常に一定の品質で日本酒を製造できるようになりました。
従来は、造る年ごとに品質に多少バラつきがあり、杜氏が変わると日本酒の味も変わるような状態でした。
製造方法の変化は、品質の安定だけでなく、品質の向上にも寄与しています。
試行錯誤によるデータは積み上げられ、最適の条件が数値で分かるようになったからです。

杜氏のいない酒蔵の実例

杜氏がいない酒蔵は、徐々に増えつつあり、そこで造られる日本酒の品質も、評判になるほどに高まっています。
そこで、杜氏がいない酒蔵の実例を挙げ、具体的にどのような酒造りがなされているか、調べてみることにしましょう。

山口県の酒蔵で、銘酒「獺祭(だっさい)」を醸造している旭酒造は、杜氏がいない酒蔵です。
旭酒造では、杜氏がいないので、データ管理と集団協力体制とによって、評価の高い「獺祭」を製造しています。
例えば、洗米の作業でさえ、正確なデータ管理で行ないます。
米の重量、洗う時間、水の温度、これらを厳密に管理しながら行ない、米の水分含有量を一定の範囲に調整します。
洗米の作業に限らず、全ての作業を数値管理します。
このように、全ての作業はマニュアル的なものですが、醸造過程における麹と酵母の生きた活動では、予想できない偶然性も混じるため、数値だけで製造のプロセスを完璧にコントロールすることは難しい、と言います。数値に現れない部分もあるので、その部分は経験豊富なリーダー格の者によって臨機応変に判断する、と言います。

なお、杜氏がいない酒蔵は、旭酒造以外に、新潟の小黒酒造、神奈川の泉橋酒造などがあります。
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