カルチャー  カルチャー 2018年6月18日 更新 お気に入り追加 0

今更聞けない!日本酒の濾過の話

Kosuke Takayanagi Kosuke Takayanagi

〜日本酒愛の伝道師〜 国際唎酒師&SAKE DIPLOMAの高柳宏介が提案する美味しい日本酒のある生活。Instagramでは@sake_evangelist としてオススメの個別銘柄やお店の紹介をしています。さて今回は、日本酒の濾過の話にいってみようと思います。

濾過って何をするの?

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「濾過=漉して不純物を取り除くこと」

日本酒は醪を搾ってできた飲み物というのは皆さんご存知だと思います。

その方法としては、酒袋に醪を入れて搾ったり、搾り機に醪を流し込んで搾ったり、遠心分離をしたりと方法は多岐に渡りますが、「濾す」という行為を経て初めて醪は日本酒になります(酒税法的に)。

重要なことは、この1回目の搾る(濾す)という行為自体は酒造りにおいては濾過と判断されないことが多いということです。やっていることは明らかに濾過なんですが、大人の事情です、きっと。

さて、一般的な酒造りにおいて濾過と言われるのは、だいたい「炭濾過」もしくは「濾過器」に通す事を言います。

炭濾過であれば、粉末状の活性炭を直接タンクに投入し、不純物や色味を吸着させ、そして最後に炭や滓が残らないよう濾過器に通します。そうすることでクリアでスッキリとした雑味のない日本酒を作ることが可能となります(やり過ぎると味も素っ気も無い液体になってしまうので加減が大事)。

そして最も大きなメリットは火落ち菌による汚染や過剰な着色やにおい付きのリスクを軽減してくれるところにあります。これは熟成を目指す上では大きな利点(熟成中に予想外の菌の繁殖により痛んでしまっては元も子もない為)と言えます。

じゃあ無濾過って何?

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厳密にいうと、無濾過の表記については蔵の裁量に任されておりルールがありません。極端な話、造った蔵が「これは無濾過だ!」と言えばそれで無濾過になります。

何だそりゃ!と感じるかもしれませんが、そのくらい緩いルールなのです。

また、無濾過の幅にしても粗い目で濾すだけのものから、酒袋で漉しきれなかった微粒子が入っているもの、濾過機には通さないがしっかり滓引きして全く濁りを感じないものなど多岐に渡ります。

記載についても様々。

「無濾過」「おりがらみ」「うすにごり」「にごり酒」「かすみ酒」「そのまんま」などが多いでしょうか。もしかするとこれ以外にもあるかもしれませんし、無濾過であっても記載していない日本酒だってあるかもしれません。

一つ言えることは、味の要素が強い日本酒にとっては濾過をできるだけしないというのは、その日本酒が持っているポテンシャルをそのまんま飲ませていただくというようなイメージかなというところです。

ここで濾過と無濾過の特徴を比較
一旦ここで先ほど挙げた濾過と無濾過の日本酒の特徴を比較してみましょう。

大まかに特徴を分けると

【濾過した日本酒の特徴】
・スムースな口当たり
・濁りのないクリアな質感
・スッキリとした仕上がりが多い
・香りの要素が最初に感じられることが多い

【無濾過系の日本酒の特徴】
・フレッシュな口当たり
・程度の差はあるが濁りを帯びている
・微発泡 or 発泡であることが多い
・滓に含まれる旨味や独特の味わいが感じられる
・味の要素が最初に感じられることが多い

以上こんな感じで解説してきましたが、、

日本酒を選ぶにあたって大事なことは、スペックがどうということではなく、造り手がどういう意図を持っているのか、どうしてそのような味の設計にしたのか、そこに思いを馳せながら選ぶことだと思います。

それでは本日今宵も、素敵な日本酒とあらんことを
〜日本酒に愛を、酒飲みに幸せを〜
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